仕事を行っていくうえで「工数」というものは一度は耳にしたことがあるかと思います。ビジネスがデジタル化していき、あらゆる情報が可視化されていく昨今では、この「工数を管理していく事」がこれまで以上にシビアで重要な因子になっております。
工数管理は、あらゆるビジネスのプロジェクトにおける指標となり、特に進行・進捗管理、そしてプロジェクトの損益分析において最も重要になり、精度が高くそしてスピードが求められるようになっております。プロジェクトのご担当者からマネージャーやディレクター、そして管理者から経営陣まで、この工数に関するビジネス環境は無視することはできません。
しかし、理想的な工数管理はしたいけど上手く行かないのが現実です。
そこで本ブログではあらためて工数管理の基礎知識やメリットなどをご紹介し、工数管理を初めて行う方には、工数管理の知識やノウハウをご提供することで新たな知見の取得を可能します。また既にご存じの方には、初心に戻ったつもりで工数管理の重要性を再認識していただくことが可能になります。双方にとって役立つコンテンツがございますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 1. 工数とは?
- 2. 工数管理とは?
- 3. 工数管理のメリット
- 3.1. プロジェクト単位での損益状態が確認できる
- 3.2. 作業進捗が把握できる
- 3.3. コストを把握できる。
- 3.4. プロジェクトの生産性向上
- 4. 工数管理のデメリット
- 4.1. 管理コストの増加
- 4.2. モチベーションの低下
- 4.3. フレキシビリティの低下
- 4.4. 正確性の問題
- 5. 工数管理の注意点
- 5.1. 工数管理が主な業務になってしまう。
- 5.2. 工数管理のための工数が多くなりすぎる。
- 6. 工数管理の方法とは
- 6.1. 意識
- 6.2. 計画
- 6.3. 実行・監視
- 7. 工数管理の便利なツール
- 7.1. WBS
- 7.2. ガントチャート管理
- 7.3. まとめ
工数とは?
工数とはよく耳にされると思いますが、システムなどのプロジェクトの場合では「あるプロジェクトのタスク(作業)」が完了するまでに必要なリソース量の事となります。リソースとは人数と時間となります。システム開発などでもよく使われており、プロジェクトタスクが完了するために必要な「作業時間」と期間内に完了するために必要な「人員」をかけ合わせて算出されます。これらは〇人月(にんげつ)や〇人日(にんにち)のような単位で表します。
この工数は、プロジェクトの計画、実行、および管理において非常に重要な役割を果たします。プロジェクトの開始前に、プロジェクトマネージャーや関係者は、各タスクの工数を見積もり、プロジェクトの全体的な工数を計算しプロジェクトの予算や期間を決定する事でリソースの配分を計画することができます。
工数管理とは?
プロジェクトなどでは、完了までに膨大なタスクが存在しており、そのタスクを完了するために一定の「工数」が必要になります。このようなプロジェクトやタスクの完了までの工数を把握しコントロールすることが「工数管理」となります。
工数管理は以下のような業務を行います。
- 工数の算出・見積もり:
各タスクの工数を見積もり、プロジェクト全体の工数をプロジェクトの開始前に計算します。これにより、予算やリソースの配分を決定することができます。 - 工数追跡:
プロジェクトが進むにつれ、実際の進捗と比較して工数を再度見直し、プロジェクトの進捗状況を把握・監視します。予算や期間の調整が必要な場合に早期に対応できます。 - 工数報告:
工数に関する進捗状況や問題点などを報告し、プロジェクトマネージャーや関係者に提供します。これにより、プロジェクトの問題を早期に把握し、適切な措置を取ることができます。 - 工数分析:
工数のデータを分析し、プロジェクトの進行状況やリソースの使用状況、将来のプロジェクトの見積もりなどに役立てます。
この「工数管理」はプロジェクトだけではなく、事業運営や経営にもつながる概念です。「リソースの把握とコントロールを行う」という事は、コスト・利益、損益分岐・業務効率・進捗管理を行う事なので、結果として事業や経営指標と深くつながります。したがって、工数を管理するということは事業経営に密接につながると考えることができます。この事から、如何に適切な工数管理がどれほど重要かお分かり頂けるかと思います。
工数管理のメリット
工数管理はシステムプロジェクトなどで利用されますが、そのメリットは何でしょうか。ここでは工数管理のメリットをご紹介します。
プロジェクト単位での損益状態が確認できる
企業にとってはあらゆる業務活動で利益を生み出すことは重要な目的の一つです。「企業」という一つの形で見れば、お金の出入りは必ず確認できるため、会社の全体的な収支を把握することが可能です。しかし様々な事情から、システム開発や製造などのプロジェクト単位では、明確な損益が把握されていない事が多くあります。
こういった損益がはっきりしていないプロジェクトが集まったものの結果が企業の収支を決定づけていると考えると、収支の内訳を把握できてないプロジェクトが混在しておりある意味どんぶり勘定と同義になり、企業にとっては非常に危険です。しかし工数管理を行うことで、見積もり予算に対して実際の工数が数値で分かるため、プロジェクト単位で正確な収支管理ができ、結果として企業全体の正確なコスト状況が把握できることとなります。
作業進捗が把握できる
工数管理は、プロジェクトの進捗を把握する有効な手段になります。計画時に立てた作業別の予定工数に対して実際にはどの程度かかっているかなど管理することで把握が可能になります。予定工数と実際の工数を比較し、予想と現実の乖離状況を知ることで、作業の調整や、遅れている場合の対策などが可能になります。このように、工数管理は、事業やプロジェクトの進捗を管理する有効なツールとなります。
コストを把握できる。
工数管理といえば、まずコストが把握できることがすぐに思い浮かびます。プロジェクトはタスクの集合体で、タスクには工数がついて回ります。この工数を算出することで、プロジェクトの予算(見積もり)を算出することが可能になり、このコストに利益をのせることで、プロジェクト全体の売上と、利益を確保した予算計画を立てる事ができます。あとはこの予算に対して実際の工数を管理し、予実管理することで、プロジェクト全体の収益をほぼリアルタイムで把握することが可能です。
プロジェクトの生産性向上
工数管理を行うということは、進捗はもちろんコストを把握することが可能になります。その情報を元にプロジェクトの方向性を決めていくことができれば、それはプロジェクトの生産性の向上につながります。進捗を数値で確認することで、計画通りに進んでいない箇所を特定しその差を埋めるための手段を数値で判断が可能になります。逆をいえば、数値がプロジェクトのトラブルなどのアラートを出すため、トラブルを事前につぶすことが可能で、結果的に生産性の向上が可能になるのです
工数管理のデメリット
工数管理そのものから、工数管理の重要性とメリットをご紹介してきました。工数管理は非常に有用で効果も高いのですが、その反面、様々なデメリットが存在することも確かです。このデメリットを把握し理解しておくことは、より正しい工数管理の導入や運用が実現可能に近づきます。
管理コストの増加
工数管理システムの導入や保守には一定のコストやリソースを割く必要が出てきます。工数管理システムの構築、トレーニング、ソフトウェアのライセンス料などの初期や運用費用の発生や、工数管理を行う仙人担当者などの手配が必要な場合があります。また導入時だけでなく、工数管理は、作業時間や進捗状況を記録し、集計するために追加の時間と手間を必要とします。時間と手間がかかるという事は、リソースを消費する事となるため、作業自体に費やすことができる時間が減少し、生産性が低下し、管理のための管理により、コストが増加する可能性があります。
モチベーションの低下
工数管理は、作業時間や進捗状況の厳密な追跡を行うことがあるため、チームメンバーのモチベーションを下げてしまうことがあります。厳密な管理や継続的な監視は、従業員にとって大きなストレスやプレッシャーを掛けてしまい窮屈な状態を生み出すことで、業務に対するモチベーションがそがれる環境が生まれやすいです。またタスクが単なる数値や統計として見てしまうことが多いため、個々の貢献やクリエイティビティが見落とされる可能性もあります。
フレキシビリティの低下
工数管理は、タスクの予測と予測外のリソースの割り当てに基づいて計画されます。しかし、実際のプロジェクトでは予測外の問題や変更が発生することがよくあります。このような場合、工数管理は予測に基づく固定的な計画に固執し、柔軟性や適応性が制限される可能性があります。
正確性の問題
工数管理は、作業時間や進捗状況を正確に把握することを前提としています。しかし、従業員が正確な情報を提供しない場合や、誤った情報を入力する場合があります。また、複数のプロジェクトやタスクに同時に取り組んでいる場合、時間の追跡や報告の正確性が失われてしまい、工数管理そのものが成り立たなくなる状況が発生します。
このように、工数管理を行うことで、上記のようなデメリットも可能性として存在するため、バランスを鑑みた適切な工数管理が求められます。
次は実際に工数管理を行う際の注意点を見ていきましょう。
工数管理の注意点
工数管理を行うことはとても重要ですが、それと同時に以下のような注意するポイントもあります。
工数管理が主な業務になってしまう。
これは工数管理を行う時によく発生する事象ですが、工数の把握を重要視しすぎるあまり、チェックする事自体に業務の大半を費やしてしまい、肝心の作業進行や、プロジェクトの対応判断などが行われなくなるということが起こりえます。工数管理で得られるものは、プロジェクトや事業の現実的な結果です。この結果に対して何をどのように対処するかは、管理するマネージャー、管理者、経営者の重要な仕事です。工数管理で得られた数値的結果を元に、作業者とのコミュニケーションを図り、改善判断と実行を行うことが重要です。管理そのものは、重要な判断をするためにワンステップとしてとらえることを心がけることが重要です。
工数管理のための工数が多くなりすぎる。
こちらもよく見られる現象ですが、工数管理の精度を高くしすぎるために、工数管理のための工数が大幅に増大することで、作業リソースを圧迫することがよくあります。単純にプロジェクトのタスクブレイクを行い、さらにそのタスクを細かく分類し、一つ一つの動きの工数を図ろうとしてしまいがちです。これでは、都度工数を入力したり、その工数入力表などを作成するだけでもリソースを割かねばなりません。こうした事が起きると結果的には工数入力のためだけに時間をとられるので、作業者のモチベーションは上がらず、工数管理したけれど、プロジェクトが回らないといった事が起きます。
工数管理の方法とは
そんな工数管理ですがどのような方法で行えばよいのでしょうか。ここではその一例を紹介いたします。
意識
工数管理で重要になってくるのは、まずは工数を意識する事と、その管理の重要性をできれば組織的に認識することです。行っていくことで徐々に慣れていく側面もありますが、まずは工数管理を行う意義や重要性を関係者全員と共有することをおすすめします。また可能な限り経営層や上層部が、工数管理を徹底して取り入れる意識を持たない限り、工数管理の取り組み自体が中途半端に終わることが多くあります。これは工数入力や管理というのは、現場にとって自身の作業が増えると感じてしまうことが多いためです。これによって、現場リーダーや工数管理を行う方は間に挟まれることで徐々に工数管理の熱意が低くなり、結果として形骸化していきます。
このような状況を避けるために、意識をメンバー全体で共有し、可能な限り企業の方針としてで工数管理を行う事を意識することが重要となります。
計画
工数管理における次のステップは「計画」です。プロジェクトを構成するタスクを洗い出し、そのタスクをこなすために必要な人員と、かかる作業時間を算出し、制限ある中での最適な配置や予算を確保します。この計画でまず行うべきことは、プロジェクト全体のタスクを洗い出すことです。いきなり細かなタスクまで出すのではなく、大まかなステップを出し、そのステップでさらに細かく出していくことが効率的です。
こうして出てきたタスクに対しての担当スタッフや、作業時間を算出します。作業時間はスタッフによっても変動があり、またその役職などによって人件費が異なるため、プロジェクト全体の予算を意識して配置配分を行っていきます
実行・監視
計画を立てることができれば、最後は実行です。しかし計画を立て、実行しても、「記録」が行われなければ、予実管理を行うことができず、意味をなしません。したがってここでは「工数管理」を実行するために、プロジェクトに関わるスタッフ全員が工数を入力する必要があります。
また、この工数の入力は、非常に重要な内容であるため、精度の高い情報を継続して行く必要があります。維持するための入力テンプレートの工夫や、定期的なミーティングなどで工数内容の精度の確認などを行うことで、精度の高い工数情報を取得し、工数管理の継続とプロジェクトや事業の成功の可能性が高まります。
工数管理の便利なツール
ここでは、実際に工数管理を進めるときに便利なツールをご紹介します。
WBS
WBSとは、Work Breakdown Structure(作業分解構造)の略称で、プロジェクトを小さな作業単位に分割し、それらを階層的に整理したものです。特殊なツールを使うわけではなく、プロジェクトのタスクを洗い出しそれらをエクセルなどに落とし込み見える化する手法の一つです。エクセルなどでよく作られるため、テンプレートなども取得しやすくかつ多くの人が知っている手法のため、受け入れられやすいのも特長です。
ガントチャート管理
ガントチャートは、プロジェクトスケジュール管理に用いられる、棒グラフを用いた計画表の一種です。プロジェクトの進捗状況を視覚的に表現することができ、作業の開始日、終了日、期間、進捗状況、リソースなどの情報を一覧することができます。
ガントチャートは、プロジェクトのスケジュール管理に欠かせないツールで、プロジェクト全体のスケジュールや、各作業の進捗状況を管理するために広く用いられています。ガントチャートは、作業を棒グラフで表現し、作業の開始日と終了日を示し、作業期間を可視化することで、プロジェクトの全体像を一目で把握することができます。エクセルなどでも作成は可能なのですが、ひな形などを利用するか、専用のツールなどを利用する事をお勧めします。
まとめ
工数管理はますます重要になってきており、求められる精度とスピードは無視することはできません。しかしその役割は非常に重要で、おろそかにする事で、結果として利益に結びつくような重大な損失を招きます。しかし適切な工数管理はリソースの把握とコントロールが可能になり、プロジェクトや事業の収益性を見通し、成功への道しるべともなります。
工数管理を行うことで得られるメリットとともに、導入にあたっての注意点もお伝えしていましたので、これらを踏まえて適切な工数管理の実行と、プロジェクトや事業の成功、そして生産性と収益率の向上につながれば幸いです。