業務を遂行していく中で、新たな設備、備品、そしてシステムの導入や開発などに携わる事は少なくありません。上記のようなサービスを導入する、または販売する状況において、ほとんどの場合で「保守」または「運用・保守」といった契約の話が出て来ます。この保守契約はとても重要な契約なのですが、その重要性の割には契約そのものが一体どういったものか説明するのは難しかったりします。
本記事では、既知の方もそうでない方も、保守契約そのものをもう一度振り返り、その重要性と利点、適切な管理方法をご紹介し、明日からのビジネスに活用頂ければと思います。
- 1. 保守契約とは
- 1.1. 保守契約のよくある内容
- 1.2. どんなモノが保守契約対象になる?
- 1.2.1. 情報技術(IT)製品やシステム
- 1.2.2. エレクトロニクス製品
- 1.2.3. 医療機器
- 1.2.4. 産業設備など
- 2. 保守契約締結のメリット
- 2.1. 優先的なサポート
- 2.2. 専門的な知識と技術的なアドバイス
- 2.3. 定期的なメンテナンスとアップデート
- 2.4. コスト効率の向上
- 3. 保守契約のデメリット
- 3.1. 追加費用・費用負担
- 3.2. 依存度の増加
- 3.3. 制約
- 3.4. 長期契約の拘束
- 4. 保守契約を適切に管理する
- 4.1. 契約内容の明確化
- 4.2. 選定と評価
- 4.3. レポートと監視
- 4.4. 契約の見直しと更新
- 5. よい投資となるような保守契約を締結しましょう
保守契約とは
そもそも保守契約とは何でしょうか。一般的には製品やサービスの提供者と顧客との間で締結される契約で、製品やサービスの保守・修理・メンテナンスなどのサポートを提供する内容が含まれます。この契約の締結により、顧客は製品やサービスを安定的に利用することができるため、顧客業務の信頼性やパフォーマンスの維持・向上が期待できます。
保守契約のよくある内容
一般的な内容としてはまず、定期的なメンテナンスや点検サービスがよくあります。これは製品やシステムの正常な動作を確保するために、定期的に行われる保守活動で、ソフトウェアのアップデート、ハードウェアの交換、トラブルシューティングなどを受ける内容となります。
また、保守契約では優先的なサポートや技術的支援を受けるといった保守内容もございます。顧客は問題が発生した際に、保守を受けていない人に比べて迅速な対応や、専門知識を持つサポートスタッフとの相談が可能になります。これにより、問題解決のスピードや品質が向上し、顧客の業務や活動の中断を最小限に抑えることができます。こうしたことから、保守契約は、導入した製品やサービスを利用する顧客や企業にとって、業務がより円滑になるように、推進するための契約とも言えます。
どんなモノが保守契約対象になる?
保守契約の対象は、ある意味ではなんでも対象となりえますが、一般的には以下のような製品・サービスに付随する事が多くあります。
情報技術(IT)製品やシステム
コンピューターソフトウェア、ネットワーク機器、サーバー、ストレージデバイスなどのIT製品や、それらを組み合わせたシステム、開発したシステムなどが保守契約の対象となることがあります。
エレクトロニクス製品
コピー機、プリンター、監視カメラといった電子機器や家電製品、産業用機器なども一般的な保守契約対象です。
医療機器
MRIスキャナーや超音波検査装置、血圧計など病院や医療施設で使用される医療機器も保守契約の対象です。特にこれら製品は命に関わる機器であることから、保守契約などは非常に重要になります。
産業設備など
ロボット、コンベアベルト、発電機、工場や製造業で使用される産業設備や機械の他に、エネルギー管理システムも保守契約の対象となります。このようにほとんどの製品やサービスは保守契約の対象となりえます。
では次に、保守契約の締結にどのようなメリットがあり、またデメリットがあるのか理解していきましょう。
保守契約締結のメリット
保守契約を締結する事には様々なメリットが存在します。契約内容によって大きく変わりますが、まず一般的なメリットを把握しておきましょう。
優先的なサポート
まず最も基本的なメリットとして、製品やサービスの提供者から優先的なサポートを受けることができます。これは問題や故障が発生した場合に、保守契約を締結していないユーザーよりも、迅速かつ効果的な対応を受けられるため、業務の中断や損失を最小限に抑えることができます。
専門的な知識と技術的なアドバイス
製品やサービスの提供者から、専門的な知識と技術的なアドバイスを得ることができます。製品の最適な利用方法や何か起きたときの問題解決方法など、専門家でしか知りえないようなアドバイスを受けることで、製品のパフォーマンスを最大限に引き出し、トラブルを未然に防ぐ事も可能になります。
定期的なメンテナンスとアップデート
製品やシステムの最新バージョンやセキュリティパッチの適用、性能向上のための調整など、定期的なメンテナンスやアップデートが行われることで、製品の安定性と信頼性を確保することができます。
コスト効率の向上
製品やサービスのライフサイクル全体のコストを効果的に管理することができます。定期的なメンテナンスや修理、部品の交換が含まれているため、予期せぬトラブルによる高額な修理費用を回避することができます。
上記のようなメリットを考えると、保守契約は企業や組織にとって非常に重要な投資とも考えることができます。
保守契約のデメリット
保守契約を締結する方がもちろんよいのですが、投資と考えた場合、何かしらのリスク、つまりデメリットも存在します。以下は一般的にデメリットと考えられる事項です。
追加費用・費用負担
保守契約には製品やサービス本体の導入費用だけでなく、保守料金という形で、製品やサービスの提供者に対して定期的な支払いや追加料金を支払う必要があります。当然の事ですが無償サービスではなく、保守の内容によっては高額になることもあるため、一部の企業や組織にとっては予算への負担となる場合があります。
依存度の増加
保守契約の締結は、製品やサービスの提供者に依存する必要が生じます。導入した製品やサービスが企業にとって重要なほど、依存度は高くなりやすく、契約解除や別の提供者への切り替えなどが困難になる場合もあります。さらに、提供者のサービス品質や対応力に依存するため、提供者の変化や不具合によって影響を受ける可能性があります。
制約
保守契約には一定の条件や制約が含まれることがあります。例えば、特定の修理業務や部品の提供に限定された範囲がある場合があります。これは製品を自社での修理やカスタマイズなど行った場合、保守が受けられなくなったり、別費用が生じる事もあり、製品やサービスに対する制約により思わぬリスクが発生する事があります。
長期契約の拘束
保守契約は通常、長期間にわたって締結されることがあります。契約の期間中にビジネスニーズや技術の進化が変化した場合、契約内容の柔軟な変更や解除が難しいことがあります。
これらのデメリットは状況や個別の契約内容によって異なるため、契約を検討する際には慎重に検討することが重要です。メリットとデメリットを把握したうえで、ニーズや要件をよく理解し、コストと利益のバランスをとって締結する必要があります。
保守契約を適切に管理する
保守契約は、適切に管理されていない場合、思わぬトラブルが発生し、せっかくの契約を活用できない事があります。保守契約は以下の手順のように適切な管理を考慮することが重要です:
契約内容の明確化
保守契約を締結する前に、契約内容を明確かつ具体的に定義しましょう。契約範囲、対象となる製品やサービス、提供されるサポート内容、期間、料金などの詳細を明確にすることで、後々の誤解やトラブルを防ぐことができます。
選定と評価
契約する製品やサービスの提供者を選ぶ際には、信頼性や実績、技術力などを評価しましょう。適切なプロバイダを選ぶことで、良質なサービスとサポートを受けることができます。
レポートと監視
契約の期間中に、サービス提供や問題の対応状況を定期的にレポートとして受け取りましょう。また、保守契約に含まれるメンテナンスやアップデートが実施されているか監視し、適切に行われていることを確認しましょう。
契約の見直しと更新
保守契約はビジネスの変化や技術の進歩に合わせて適宜見直す必要があります。契約期間の終了前に、現行の契約内容がビジネスニーズに適合しているかどうかを評価し、必要に応じて契約の更新や改定を行いましょう。
よい投資となるような保守契約を締結しましょう
保守契約の締結は、導入した製品やサービスを安定的に利用ができるようになり、顧客業務の信頼性やパフォーマンスの維持・向上が期待できるようになります。その一方で追加費用、依存度の増加、契約制約、長期契約の拘束、不必要なサービス提供の可能性などのデメリットがあり、メリットとデメリットのバランスを考慮することがとても重要になります。上記の事から、保守契約は一種の投資判断とも考えられるため、保守契約を適切に管理しながら、最大の投資効果をもたらす保守契約を締結しましょう。