PMBOKとは何か?プロジェクト管理に使える知識集を解説

PMBOKについて。プロジェクトマネジメントイメージ

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクト管理の基本的な知識を体系的にまとめたガイドラインです。日本語では「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」と訳され、プロジェクト管理協会(PMI)が作成しました。PMBOKは、プロジェクトを計画し、実行し、成功に導くためのフレームワークを提供しており、世界中のプロジェクトマネージャーにとって重要な参考資料となっています。本記事ではPMBOKについてまとめておりますので、知識を深めていきましょう。

PMBOKの歴史的背景

PMBOKは「Project Management Body of Knowledge」の頭文字で、日本語では「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」と翻訳されます。PMBOKは、プロジェクト管理協会〈Project Management Institute (PMI)〉が作成したガイドラインで、プロジェクト管理の学習者や実践者が参考にするための基準テキストとして導入されました。

PMBOKの歴史イメージ

PMBOKの歴史は1970年代にまで遡ります。この時代、多くのプロジェクトは経験則に基づいて管理されていましたが、プロジェクトの規模と複雑性の増加に伴い、これらの方法では限界が見え始めました。このような背景の中、PMIはプロジェクト管理の実務者たちの知識を体系化し、標準化されたガイドラインとしてPMBOKを開発することを決定しました。

1987年に初版が公開されて以来、PMBOKは時代の変化とともに内容が改訂され続けています。1996年には第2版がリリースされ、プロジェクト管理の基本となる5つのプロセス群と10の知識エリアが明確化されました。その後、ITやアジャイル手法の台頭など、プロジェクト管理における新しい要件に対応するため、PMBOKは継続的に改訂が行われてきました。現在最新の第7版からは、12の原則と8つのパフォーマンス・ドメインに焦点を当てています。現在では、世界中の企業やプロジェクトで活用される、プロジェクト管理のグローバルスタンダードとしての地位を確立しています。

PMBOKの基本的な概念

PMBOKは、プロジェクト管理に必要な知識を体系的にまとめたガイドラインであり、プロジェクトを成功させるためのフレームワークを提供しています。
このガイドラインは、主に「12のプロジェクトマネジメント原則」と「8つのパフォーマンス・ドメイン」に分類されており、これらがプロジェクト管理の基本的な構成要素となっています。

「12のプロジェクトマネジメント原則」とは、誠実さや倫理観、ステークホルダーとのコミュニケーション、リスクマネジメントなど、プロジェクトの成功を促進するための基本的な行動指針です。これらの原則は、プロジェクトマネージャーがプロジェクトを効果的に管理するための基盤となります。

「8つのパフォーマンス・ドメイン」は、プロジェクトごとの異なる側面をカバーして成果を最大化するためのフレームワークです。これらのドメインは、プロジェクトの計画、実行、監視、コントロール、終結の各フェーズにおいて重要な役割を果たします。

また、重要なのは、PMBOKが固定的な手段や一律の手順を強制するものではなく、状況やプロジェクトの特性に応じて柔軟に適用できる点です。このため、組織やチームはPMBOKの枠組みを基に、自社に最適化された方法論を構築することができます。

PMBOKと他のプロジェクト管理手法との比較

PMBOKは、プロジェクト管理の基本として世界的に対応できる概念を描きますが、具体的なツールやテクニックは提供しません。これに対し、アジャイルなデリバリー手法であるScrumとは、解決したい問題や流程に対してその場で負荷分散が効果的に運用される点が違います。それでいても、PMBOKはプロジェクトに関する膨大な情報や手法を体系化することで、「情報オーバーロード」を軽減する仕組みを提供しています。具体的には、先に挙げた複数の原則とパフォーマンス・ドメインを通じて、プロジェクトマネージャーが重要な情報を効率的に解釈し、適切な意思決定を行えるよう支援します。また、標準化されたフレームワークを用いることで、資料の共有やチーム間のコミュニケーションがスムーズに進むようになり、組織全体でのプロジェクト管理能力が向上しています。これらの特長が企業での普及率向上につながっています。

PMBOKの最新版について

2021年に公開された、現在最新となるPMBOKの第7版では、従来のプロセス重視のアプローチから結果重視のアプローチへシフトし、プロジェクトの成果物の価値を最大化することに重点が置かれるように転換が図られました。

これにより、従来の計画主導型プロジェクト管理だけでなく、アジャイル型プロジェクトやハイブリッド型プロジェクトにも対応可能となりました。さらに、具体例として、「適応性」や「意思決定の透明性」を強化するためのフレームワークや、組織独自のベストプラクティスを構築するためのガイドラインが盛り込まれています。

これらの変更により、第7版はプロジェクトの多様性と複雑性に対応できる柔軟なツールとして進化を遂げ、現代のプロジェクト管理のニーズにより適応した内容となっています。

PMBOK第7版の12の原則

PMBOK第7版では、プロジェクトマネジメントの成功を支えるために12の原則が定義されています。これらの原則は、プロジェクトマネージャーがプロジェクトを効果的に管理し、ステークホルダーの期待に応えるための基本的な指針となります。

1. スチュワードシップ

スチュワードシップとは、誠実さと倫理観を持ち、責任を持って行動することを意味します。プロジェクトマネージャーは、組織の資源を適切に管理し、ステークホルダーからの信頼を得ることが求められます。具体的には、コンプライアンスの遵守や透明性の確保が含まれます

2. チーム

協働的なチーム環境を作り、メンバーの能力を最大限に引き出すことが重要です。チームの結束力とコミュニケーションがプロジェクトの成功に直結します。プロジェクトマネージャーは、チームビルディングやモチベーションの向上に努める必要があります

3. ステークホルダー

ステークホルダーと効果的に連携し、彼らのニーズや期待に応えることが重要です。ステークホルダーの関係性を高めることで、プロジェクトの支持を得やすくなります。これには、ステークホルダーの特定、分析、エンゲージメント戦略の策定が含まれます

4. 価値

プロジェクトの成果がステークホルダーにとって価値あるものであることを確認し、価値の提供に焦点を当てます。価値の測定と評価が重要です。プロジェクトの各フェーズで価値を確認し、必要に応じて調整を行います

5. システム思考

プロジェクトをシステムとして捉え、各要素の相互作用を理解することが求められます。システム全体の最適化を目指します。システム思考を活用することで、プロジェクトの複雑な問題を効果的に解決できます

6. リーダーシップ

プロジェクトマネージャーはリーダーシップを発揮し、チームを導くことが求められます。リーダーシップは、ビジョンの共有やモチベーションの向上に寄与します。リーダーシップのスタイルは状況に応じて柔軟に変えることが重要です

7. テーラリング

プロジェクトの特性や環境に応じて、プロセスや手法を適切にカスタマイズすることが重要です。柔軟なアプローチが求められます。テーラリングにより、プロジェクトの効率性と効果性を高めることができます

8. 品質

プロセスと成果物に品質の観点を組み込み、ステークホルダーの期待に応えることが求められます。品質管理はプロジェクトの成功に不可欠であり、品質基準の設定と品質保証活動が含まれます

9. 複雑性

プロジェクトの複雑性に対処し、シンプルで効果的な解決策を見つけることが重要です。この取り組みがプロジェクトのリスクを軽減します。複雑な問題を分解し、理解しやすい形にすることが求められます

10. リスク

リスクを適切に管理し、プロジェクトの成功確率を高めることが求められます。リスク対応の最適化が重要です。リスクの特定、評価、対応策の策定と実行が含まれます

11. 適応力と回復力

変化に柔軟に対応し、困難な状況から迅速に回復する能力が求められます。適応力と回復力がプロジェクトの持続可能性を高めます。変化への対応策を事前に準備し、迅速に実行することが重要です

12. 変革

プロジェクトを通じて組織や環境にポジティブな変革をもたらすことが重要です。変革の推進がプロジェクトの目的となります。変革を成功させるためには、ステークホルダーとの対話と協力が不可欠です

これらの原則を理解し、実践することで、プロジェクトマネージャーはより効果的にプロジェクトを管理し、成功に導くことができます。

PMBOK第7版の「8つのパフォーマンス・ドメイン(行動領域)」について

PMBOK第7版では、プロジェクトの成功を支援するために8つのパフォーマンス・ドメインが定義されています。これらのドメインは、プロジェクトの異なる側面をカバーし、プロジェクトマネジメントの柔軟性と適応力を高めることを目的としています。

1. ステークホルダー

「ステークホルダー」は、プロジェクトに関わるすべてのステークホルダーを特定し、彼らのニーズや期待を理解し、エンゲージメントを高めることを目的としています。ステークホルダーとの良好な関係を築くことで、プロジェクトの支持を得やすくなります。具体的な活動には、ステークホルダーの特定、分析、エンゲージメント戦略の策定と実行が含まれます。

2. チーム

「チーム」は、プロジェクトチームの構築、育成、管理に焦点を当てています。効果的なチームワークとコミュニケーションがプロジェクトの成功に直結します。プロジェクトマネージャーは、チームビルディング、メンバーのモチベーション向上、役割と責任の明確化を行い、チームのパフォーマンスを最大化することが求められます。

3. 開発アプローチとライフサイクル

「開発アプローチとライフサイクル」では、プロジェクトの開発アプローチ(アジャイル、ウォーターフォールなど)とライフサイクルを適切に選択し、管理することが重要です。プロジェクトの特性に応じたアプローチを選ぶことで、効率的な進行が可能になります。適応型アプローチや予測型アプローチの選択とその実行が含まれます。

4. 計画

「計画」は、プロジェクトの計画を策定し、実行可能なスケジュールと予算を設定することに焦点を当てています。詳細な計画を立てることで、リスクを最小限に抑え、目標達成に向けた道筋を明確にします。計画の精度がプロジェクトの成功に直結します。

5. プロジェクト作業

「プロジェクト作業」は、プロジェクトの作業を管理し、計画通りに進行するよう監督することを目的としています。作業の効率化と効果的なリソース配分が重要です。プロジェクトの進行状況を常に把握し、必要に応じて調整を行います。

6. デリバリー

「デリバリー」は、プロジェクトの成果物を適切に納品し、ステークホルダーの期待に応えることに焦点を当てています。成果物の品質を確保し、納期を守ることで、ステークホルダーの満足度を高めます。デリバリーの品質とタイミングが重要です。

7. 測定

「測定」は、プロジェクトの進捗とパフォーマンスを測定し、必要に応じて調整を行うことを目的としています。測定はプロジェクトの透明性と管理に寄与します。定期的な評価とフィードバックを通じて、プロジェクトの改善を図ります。

8. 不確実性

「不確実性」は、プロジェクトの不確実性を管理し、リスクと機会を適切に対応することに焦点を当てています。リスクを予測し、適切な対策を講じることで、プロジェクトの成功率を高めます。不確かさの管理がプロジェクトの安定性を高めます。

先に紹介した12の原則に加え、これら8つのパフォーマンス・ドメインを理解し、実践することで、プロジェクトマネージャーはより効果的にプロジェクトを管理し、成功に導くことができます。

PMBOKを使ったプロジェクト管理の実践

プロジェクト実践イメージ

PMBOKの活用事例

PMBOKは、ITプロジェクト、建設プロジェクト(CPM)、新製品開発プロジェクトなど、さまざまな分野で活用されています。たとえば、大規模な建設プロジェクトでは、スコープ管理やコスト管理が特に重要視され、PMBOKのフレームワークを活用することで成功につながるケースが多く見られます。

PMBOKの導入手順と注意点

PMBOKを導入する際は、まず組織のプロジェクト管理能力を評価し、PMBOKのプロセスや知識エリアを適用する計画を策定します。次に、プロジェクトチームに対するトレーニングを行い、実際のプロジェクトで適用します。ただし、すべてのプロセスや知識エリアを無理に適用しようとせず、プロジェクトの特性に応じて柔軟にカスタマイズすることが重要です。

実践でのメリットとデメリット

PMBOKを活用することで、プロジェクト管理の一貫性が向上し、リスクを低減できます。また、標準化されたプロセスを活用することで、チーム間のコミュニケーションが円滑になります。一方で、PMBOKは包括的なフレームワークであるため、すべてを適用しようとすると過剰な作業負荷が発生する可能性があります。

プロジェクトでの問題解決におけるPMBOKの役割

PMBOKは、プロジェクトにおける問題解決のための体系的なアプローチを提供します。たとえば、リスク管理プロセスを活用して潜在的な問題を特定し、事前に対策を講じることで問題を未然に防ぐことができます。また、変更管理プロセスを活用することで、スコープの変更がプロジェクト全体に与える影響を最小限に抑えることが可能です。

まとめ

現在までのIT業界が蓄えてきた教訓ともいえるPMBOKを学ぶことで、プロジェクト管理の基本から応用まで体系的に理解し、国際標準に基づいた実践的なスキルを身につけることができます。これにより、実務でのプロジェクト成功に貢献できるでしょう。また、キャリアアップや資格取得にも役立ちますので、ぜひ学習を進めてみてください。

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