業務の中で、必ず一度は耳にする、「工数」とは一体何でしょうか。本記事ではこの工数の意味を改めて認識し、工数に関連する「人日」「人月」といった意味やその計算等についてご紹介していきます。
工数は作業にかかる時間や労力の事
工数(こうすう)の意味を今一度見直してみましょう。
工数とは、特定のプロジェクトや作業にかかる時間や労力のことを指します。
例えば、あるソフトウェア開発プロジェクトにおいて新機能の追加を行うとします。その際、この新機能を完了させるには、デザインで30時間、開発で70時間、テストで40時間程かかるとしたときに、このかかる時間が工数として数えられます。そしてこの場合、新機能追加には合計で140時間の工数が必要になると分かります。
工数を理解すると、プロジェクトが可視化されてくる
この工数を理解すると、プロジェクトや業務が数値化されてくるようになるため、プロジェクトの全体像が見えてくるようになります。
プロジェクトの作業量が分かる
この工数は「作業にかかる時間」として表現されるため、積み重ねることでプロジェクトに必要な総作業量を把握できます。そのため、プロジェクト全体像や規模、そしてリソースの必要性を正確に理解することができます。
プロジェクトのスケジュールが立てられる
工数を基にプロジェクトのスケジュールを作成できます。作業量と人員の数を考慮し、タスクの開始と終了日程をプランニングすることができます。
リソース(人員)を適切に配分できる
工数を分析することで、必要なスキルや人員数を特定し、リソースの適切な配分が可能となります。これにより、各メンバーの負荷を均等にしたり、優先順位を付けることができます。
プロジェクト予算の見積もりができる
工数をもとに予算を見積もることができます。作業量と人件費などのコスト要素を考慮し、プロジェクトに必要な予算を算出できます。
このように工数を正確に見積もり、適切に管理することで、プロジェクトの進行状況やリソースの配分、予算管理などを効果的に行うことができます。これにより、プロジェクトの成功確率を高め、効率的な成果物の提供や品質の確保を実現することができます。
工数の単位は人日・人月で分類される。
プロジェクトなどではこの工数は時間以外の単位として、「人日(にんにち)」や「人月(にんげつ)」と分類されます。
工数に置ける「人日」とは
「人日(にんにち)」は、プロジェクトや作業において人員の数と日数を掛け合わせた単位です。具体的には、1日を8時間として、1人が1日働くことを1人日としてカウントします。
人日は、プロジェクトの規模や作業量を見積もるために使用されます。例えば、あるプロジェクトにおいて、開発者が3人で10日間作業した場合、そのプロジェクトの総工数は3人 × 10日 = 30人日となります。このように、人員の数と作業日数を掛け合わせることで、作業の総量やリソースの必要性を定量化することができます。
例:
1人が10日間作業する場合:10人日
3人が10日間作業する場合:30人日
工数に置ける「人月」とは
「人月(にんげつ)」は、人日と同様に、プロジェクトや作業において人員の数と月数を掛け合わせた単位で、1ヵ月を20日として、1人が「1か月間働くこと」を1人月としてカウントします。
こちらは人日同様にプロジェクトなどの見積もりに活用されます。例えば、あるソフトウェア開発プロジェクトにおいて、開発者が5人で3か月間作業した場合、そのプロジェクトの総工数は5人 × 3か月 = 15人月となります。
人員数: 5人
作業期間: 3か月
総工数 = 人員数 × 作業期間
総工数 = 5人 × 3か月
総工数 = 15人月
工数は見積もりに最適
人日や人月は、プロジェクトの見積もりや進捗管理、予算計画などに使用されます。開発やソフトウェアエンジニアリングの分野では広く使われており、プロジェクトの規模や時間の見積もりにおいて一般的な手法となっています。
ただし、人月は単純な計算単位であり、作業の複雑さやスキルの違い、開発の進捗状況などを考慮する必要があります。また、人月の単位自体には異なる解釈や定義が存在する場合もあります。そのため、正確な見積もりやプロジェクトの進行管理においては、より詳細なタスク分解やリソースの配分などの情報が必要となります。
工数を扱う際に注意するポイント
工数は作業などを数値化していくうえで非常に重要なものですが、以下のような注意すべきポイントもあります。
工数・見積もりの精度
工数の見積もりは予測に基づいて行われるため、完全な正確性を期待することはできません。特定の作業をこなすのに実際に「どの程度かかるのか」というのは、人が決めるからです。そのため、適切な情報収集や経験則、過去のデータを活用して見積もりを行い、見積もりの精度を向上させる努力が必要です。また、見積もりには余裕を持たせることも重要です。
リソースの可用性とスキル
工数を決めていく際は、メンバーのリソースの可用性とスキルを考慮する必要があります。メンバーの予定やスケジュール、他のプロジェクトとの兼ね合いを把握し、適切なリソースの配分とタスクの割り当てを行うことが重要です。単純な作業量だけではなく、メンバーのスキルや経験も考慮し、作業量や工数の見積もりに反映させる必要があります。
工数を算出したら、適切な工数管理を!
算出した工数は、適切な工数管理を行うことが重要です。工数管理により、プロジェクトの進捗状況や作業量を把握することができるため、算出した見積もりと実際の作業を比較し、タスクの進行状況や遅れを特定と対策が可能になります。
また、工数管理を行うことで、チームのリソースの過不足を把握できるので、効果的に再配分することが可能です。メンバーのスキルや可用性を考慮し、タスクの割り当てや作業の優先順位を決定することで、プロジェクトの成果物を効率的に生み出すことができます。
そして工数を把握することで、プロジェクトのスケジュールを予測し、管理することができます。見積もりに基づいたスケジュール作成や進捗管理により、タスクの期日達成やマイルストーンの達成を追跡することができます。
最後に工数管理はコスト管理にも繋がります。実際の作業量や進捗状況を把握することで、プロジェクトのコストを予測し、適切な予算管理を行うことができます。
このように、適切に算出した工数は、適切な工数管理を行うことで、初めてプロジェクトの効率性、品質、コスト、リスク管理において重要な役割を果たすことでしょう。
まとめ
工数とは、特定のプロジェクトや作業にかかる時間や労力のことを指し、工数を正しく理解することでプロジェクトや業務が数値化されてくるようになるため、プロジェクトの全体像が見えてくるようになります。工数は見積もりに非常に役に立ちますが、その制度を決めるのは人であるため、経験やデータに基づく算出が非常に重要です。
今回は工数そのものの意味などをご紹介いたしましたが、この基礎知識は工数見積もりやリソースの可用性計算等では非常に重要になってきます。ぜひ、この基本を取り入れてより精度の高い工数管理などを目指しましょう。