システムやソフトウェアを導入することが当たり前となった今、その管理の業務負担が増加し続けているのはご存じでしょうか。様々な日常業務が日々効率化されていくという事は、そのシステムやソフトウェアを安定定期に運用が必要となります。そのため、業務が滞らないためにはシステムを稼働させるソフトウェアやハードウェアが、適切にそして迅速に管理する事が重要といえるでしょう。

しかしその管理は非常に複雑で、膨大になるため、管理を手動で行なっていては、故障やアップデート、そして人為ミスなどのリスクが増加してしまいます。

そこで必要になるのが構成管理ツールとなります。

構成管理ツールを活用する事は煩雑だったシステム管理を一元化することで、効率化を図るだけでなく、トラブルなどの予防、そして解決などがスムーズに行えるようになりシステムの安定的な運用が実現できるようになります。

本記事では、構成管理ツールについての基本知識と、導入メリットや注意点などを紹介し、導入をご検討されている方の一助になればと考えております。

構成管理とは

前回の記事でご紹介いたしましたが、構成管理とは社内にあるIT・組込システムの運用や開発プロセスでの変更やバージョンを含む様々な管理を行い、常に最新情報を把握しておく活動の事を言います。

具体的には、「構成アイテムの識別と管理」、「変更管理」、「バージョン管理」、「構成監査と検証」、「構成管理データベース（CMDB）の管理」といった管理を行い、システムやソフトウェアのライフサイクル全体にわたって適用する活動です。これにより、変更の追跡、問題の特定、品質の向上、リスクの低減などが実現が可能になります。また複数の開発者やチームが同じソフトウェアに取り組んでいる場合にも、構成管理は作業の調整や競合の解決に役立つ大変重要な活動と言えるでしょう。

構成管理ツールとは？

構成管理ツールとは、上述の構成管理に伴う活動を支援するためのハードウェア・ソフトウェア管理ツールです。通常、構成管理業務は膨大かつ煩雑なので、重要なのにも関わらず手動管理が非常に難しいのが特長です。したがって本格的に管理を行うにはシステム化が必要になってきます。これらの構成管理ツールは、システムやソフトウェアの構成要素や変更の管理、バージョン管理、監査、トレーサビリティの確保といった構成管理のさまざまな業務を効率的にシステムで実施する機能です。手動では限界がある構成管理を、安全で正確なものへと変える非常に重要なツールとも言えるでしょう。

構成管理ツールの機能

こうしたツールには、システム開発を行う上での管理業務をサポートする機能があります。以下は構成管理ツールの代表的な機能です。

構成アイテムの管理機能

ハードウェアとソフトウェアの構成要素を一元管理します。サーバー、ネットワークデバイス、ソフトウェアパッケージ、設定ファイルなどの構成アイテムの特定、登録、追跡が可能になるため、各アイテムの属性や依存関係、関連ドキュメントなどの情報も管理が行えます。

変更管理とリリース管理機能

変更要求、修正、アップグレードなどの変更の一元管理を行います。ハードウェアとソフトウェアの変更要求を一元化し、承認、計画、実施、評価のプロセスを可視化し、サポートします。変更の影響評価やリスク分析、変更セットの作成やテスト、リリースの自動化なども可能となります。

バージョン管理と構成比較機能

ソフトウェアのバージョン管理を行い、変更履歴や差分を追跡します。バージョン間の比較やマージをサポートし、ソースコードや設定ファイルの整合性を保ちます。さらに、ハードウェアの構成も比較して一貫性を確保し、構成の変更や問題の特定が可能です。

トレーサビリティと影響分析

ハードウェアとソフトウェアの構成要素や依存関係の把握や過去に遡って追跡ができることで、トレーサビリティを確保します。変更や問題の影響範囲を分析し、関連するハードウェアとソフトウェアの特定やリスク評価ができます。これにより、変更の影響を最小限に抑え、システムの安定性と信頼性を確保します。

このような管理に特化した機能により、ハードウェアとソフトウェアの構成管理を統合的かつ効果的に行い、開発に置けるリスクを低減し、システム全体の一貫性と品質を確保することができます。

構成管理ツールを利用するメリット

構成管理ツールの機能で説明したように、ツールを利用する事で管理を一元化が可能になります。この一元管理を行うことで、以下のようなメリットが出てきます。

システム全体の一貫性と整合性の確保

ハードウェアとソフトウェアの両方の構成要素を一元管理することで、システム全体の一貫性と整合性を確保できます。ハードウェアとそれに関連するソフトウェアコンポーネントの関係性や依存関係を可視化し、適切な構成管理プロセスを実現できます。これにより、システムの安定性や信頼性が向上し、問題の特定や解決が容易になります。

変更管理とリリース管理の効率化

ハードウェアとソフトウェアの変更管理とリリース管理を統合的に行うことで、関連業務の効率化が図れます。システム全体の変更要求や修正が一元管理されるため、手動では煩雑になる変更の承認や実施、評価が容易になります。さらに、ハードウェアとソフトウェアの依存関係が明確になるため、変更の影響範囲を把握しやすくなります。これにより、リリースの計画や展開手順の調整がスムーズに行え、システムのアップデートやパッチ適用の効率性が向上します。

コラボレーションとチームワークの強化

総合的なツールは、ハードウェアとソフトウェアの開発者や運用チーム間のコラボレーションとチームワークを強化します。共通の構成管理プラットフォームを使用することで、開発者と運用者がリアルタイムで情報を共有し、協力して作業を進めることができます。ハードウェアとソフトウェアの変更や問題のトラッキング、コードベースの共有などが容易になります。これにより、チーム全体のコミュニケーションや協調性が向上し、品質の高いシステムの開発や運用が実現できます。

では、システム開発の際に、こうした構成管理ツールを導入しない場合、どういったリスクが考えられるでしょうか。次のそのリスクについて見ていきたいと思います。

構成管理ツールを導入しない場合のリスクについて

総合的な構成管理ツールの導入を行わない場合、構成管理の一貫性や効率性が低下し、システムの信頼性やセキュリティに重大なリスクが生じる可能性があります。また、変更管理やトラブルシューティングの手順が不明瞭になり、適切な対応や迅速な復旧が困難になることも考えられます。以下はリスクの例となります。

リスク1：不整合や互換性の問題

ハードウェアとソフトウェアの構成が分散して管理されるため、互いの整合性や互換性に問題が生じる可能性があります。例えば、特定のソフトウェアバージョンが特定のハードウェアに対応していなかったり、互いの設定が一致していなかったりする場合、システムの安定性やパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

リスク2：変更の混乱とリスクの増大

ハードウェアとソフトウェアの変更が分離して管理されるため、変更の承認、計画、実施が困難になります。変更の影響範囲やリスクの評価が不明瞭になり、不適切な変更が行われる可能性があり、システムの安定性や可用性に悪影響が及ぶ可能性があります。

リスク3：追跡とトラブルシューティングの困難さ

同様に、変更の履歴やトラブルシューティングに必要な情報の追跡が非常に煩雑で困難になります。特定の問題や障害が発生した場合、関連するハードウェアとソフトウェアの構成要素を特定するのに時間がかかり、対応に遅れや混乱が生じる可能性があります。

構成管理ツールを導入する際の注意ポイント

総合的な構成管理ツールの導入は、簡単ではありません。開発体制そのものを変更する場合もあるため、企業のビジョンなどと照らし合わせながら以下の注意ポイントを把握しておきましょう。

注意点1：ツールの適合性と拡張性の評価

ツールが組織のニーズに適合しているかを評価することが重要となります。ハードウェアとソフトウェアの両方の構成管理のカバーが可能で、拡張性や柔軟性を持っているか確認しましょう。将来の成長や変化にも対応できるツールを選択することが重要です。

注意点2：導入前の十分な計画と準備

ツールの導入は社内外問わず様々な利害関係者が存在するため、入念な計画と準備が必要です。ツールの導入目標やスケジュールを明確化し、関係者とのコミュニケーションを図りながら、実装に向けた準備を進めることが大事なため、既存のデータや構成情報の整理、トレーニングやドキュメンテーションの準備、導入後のサポート体制なども考慮しましょう。

注意点3:プロセスの再評価と改善

ツール導入は構成管理プロセスの再評価と改善の機会でもあります。ツールの導入に合わせて、現行のプロセスを見直し、ベストプラクティスに基づいた改善を行いましょう。適切なワークフローや変更管理手順の設計、標準化や自動化の機会を活かし、効率性と品質の向上を図りましょう。

まとめ

システムなどによる業務効率化が当たり前のようになっている今、その効率的な業務を維持するためにはソフトウェアやハードウェアの安定的な運用が非常に重要になっております。しかし、その管理業務は非常に多岐にわたり、複雑なため手動で行うにはコストや、トラブルのリスクなどが非常に高いものなってしまいます。そんな中、構成管理ツールは、ハードウェアとソフトウェアの構成すべてを一元で管理することが可能で、何か起きても追跡できるようになるため、適切な管理がしやすくなり、そして、安定的な運用の実現が可能になるでしょう。

ハードウェア・ソフトウェアとシステムの管理に携わる方は、ぜひ一度この構成管理ツールについて検討してみるとよいでしょう。