トレーサビリティとは、ある製品や原材料の生産から流通、販売、消費に至るまでの過程を追跡し、その情報を管理することを指します。製品がどのように作られ、どこから来たのか、どこに行ったのかを明確にすることで、

・消費者にとっては安全性や品質の確保

・企業にとっては生産性の向上やコスト削減

・社会にとっては環境や倫理の問題に配慮したサステナビリティ（持続可能性）の実現

など、様々なメリットがあります。

また、トレーサビリティは食品や医薬品などの安全性を確保するために、法律や規制によっても義務付けられています。最近では、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの取り組みも増えています。

今回の記事では、トレーサビリティ管理の重要性についてご紹介していきます。

トレーサビリティツールとは？

トレーサビリティツールは、現在、様々な業界で使用され、品質管理や生産管理、品質保証に欠かせないツールとなっています。またトレーサビリティツールは、製品がどのように生産され、どのような過程を経て消費者の手に渡ったかを追跡し、情報を一元管理することができます。そのため、製品の安全性や品質を高め、消費者の信頼を獲得することが可能となります。

近年のトレンドとしては、より高度な技術を取り入れたトレーサビリティシステムが増えています。例えば、IoT（モノのインターネット）を利用した製品の自動追跡や、AI技術を用いた異常検知などがあります。これらの技術を取り入れることで、製品の追跡をより正確かつ迅速に行うことができます。

また、トレーサビリティツールは、SDGs（持続可能な開発目標）の達成にも貢献しています。例えば、農業分野では、生産者が作った農作物の品質や安全性を確保し、消費者が安心して食べることができるようにすることが求められています。そのため、トレーサビリティツールを活用することで、生産者と消費者の信頼関係を構築し、農業の持続可能性を高めることができます。

加えて、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティツールの開発も進んでいます。ブロックチェーン技術を使用することで、取引の透明性や信頼性を高めることができます。また、取引履歴が不正な操作や改ざんから守られるため、安全性も高くなります。

IT業界におけるトレーサビリティとは

IT業界におけるトレーサビリティは、ソフトウェア開発やITサービスの提供において、各工程での作業や修正内容を明確にすることで、製品やサービスの品質管理や問題発生時の原因特定を容易にするための取り組みを指します。

具体的には、ソフトウェア開発においては、コードの修正履歴や各バージョン間の変更点などを管理するバージョン管理ツールを利用し、トレーサビリティを確保します。これにより、不具合が発生した場合に、どのバージョンから不具合が発生しているのか、どのような修正が行われたのかなどを迅速に特定することができます。また、ITサービスの提供においては、顧客からの問い合わせや障害発生時の対応記録などを管理することで、トラブルの発生原因を特定し、同様の問題が再発しないように対策を講じることができます。 IT業界におけるトレーサビリティの重要性は、製品やサービスの品質を確保するだけでなく、企業の信頼性や競争力にも影響を与えます。特に、近年の情報漏えいやサイバー攻撃などの事件が頻発する中、トレーサビリティは企業の情報セキュリティ強化にも欠かせない要素となっています。

トレーサビリティツールの選び方

IT業界でトレーサビリティを実現するためには、適切なトレーサビリティツールの選定が重要です。以下に、IT業界でトレーサビリティツールを選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。

・機能の充実度

トレーサビリティツールは、開発プロセスにおける要素間の関係を追跡するための機能が必要です。これには、要件管理、テスト管理、リリース管理、バグ管理、変更管理などが含まれます。ツールを選ぶ際には、必要な機能が充実しているかどうかを確認することが大切です。

・ユーザビリティ

トレーサビリティツールは、開発プロセスの複雑性を抑えるためのツールです。しかし、使い方が複雑だったり、操作がわかりにくかったりすると、効果的に利用することができません。ツールのユーザビリティについても確認し、使いやすいツールを選ぶことが大切です。

・カスタマイズ性

IT業界では、企業ごとに開発プロセスが異なるため、トレーサビリティツールも、カスタマイズ性が高いことが求められます。ツールを選ぶ際には、カスタマイズ性についても確認し、必要な機能を追加したり、不要な機能を削除したりすることができるツールを選ぶことが大切です。

・統合性

トレーサビリティツールは、開発プロセスのさまざまな要素を統合するためのツールです。しかし、別々に使用するツールとの連携がうまくいかないと、トレーサビリティを確保することができません。ツールの統合性についても確認し、開発プロセスにおけるさまざまな要素を一元的に管理することができるツールを選ぶことが大切です。

・価格

トレーサビリティツールには、機能や品質によって価格が異なります。また、導入コストや運用コストもかかるため、コストパフォーマンスに優れたツールを選ぶことが大切です。

トレーサビリティ管理のメリット

IT業界におけるトレーサビリティ管理には、以下のようなメリットがあります。

・問題の特定と修正の迅速化

トレーサビリティ管理を実施することで、開発プロセスの各段階で発生した問題の原因を特定することができます。そのため、問題が発生した場合、迅速に修正できるようになります。また、同じ問題が再発生した場合にも、過去の修正履歴を参照することで迅速な対応が可能になります。

・規制・法令への対応

IT業界においては、GDPRやSOXなどの法令・規制に従うことが求められます。トレーサビリティ管理を実施することで、開発プロセスの各段階で実施された作業や変更を正確に把握できるため、法令・規制に対応するための報告書作成や監査にも対応しやすくなります。

・品質の向上

トレーサビリティ管理により、開発プロセスの進捗状況や問題点を可視化することができます。そのため、品質に関する問題点を早期に発見し、改善することができます。また、トレーサビリティ管理により、システムの正確な動作仕様を把握することができるため、開発チームや顧客とのコミュニケーションが円滑になります。

・プロジェクトの進捗管理

トレーサビリティ管理により、開発プロセスの進捗状況を把握することができます。そのため、プロジェクトの進捗状況を適切に管理することができます。また、トレーサビリティ管理により、開発プロセスの各段階での作業量や時間を把握することができるため、プロジェクト管理の効率化にもつながります。

・開発チームのコラボレーションの向上

トレーサビリティ管理により、開発チームの各メンバーが作業内容や進捗状況を共有できるため、コラボレーションの向上につながります。

品質向上、コスト削減を図るために

IT業界においても、製品の品質管理や開発プロセスの改善においてトレーサビリティツールの利用が重要視されています。

またトレーサビリティツールには、要件トレーサビリティツール、品質トレーサビリティツール、バージョン管理ツールなど用途に応じたツールがあります。

導入する際には、企業のニーズに合わせてツールの機能や操作性、価格などを比較検討することが重要です。また、ツールの導入だけでなく、適切な運用やメンテナンスが必要です。 弊社もトレーサビリティツールの導入やサポートをおこなっております。クラウド型なのでグローバルな構成管理が可能で、サブスクリプション型の料金体系のサービスです。トレーサビリティツールの導入をご検討されている方は、ぜひこの機会にご相談ください。